飼い鳥さんで重要な感染症についてご紹介します。
感染症の多くは発症(感染して症状が出る)前に発見して治療することが重要です。
バードドックで感染症の検査をできるコース(AコースとDコース)もあります。特にまだ感染症の検査をしたことがない鳥さんはぜひご検討ください。
鳥さんに重要な感染症
- オウム類の嘴・羽毛病(PBFD)
- セキセイインコ雛病(BFD)
- 鳥クラミジア症(CHL)
- 鳥ボルナウイルス病(ABV)
- 鳥結核症(ATB)
オウム類の嘴・羽毛病(Psittacine Beak and Feather Disease:PBFD)
原因
- PBFDウイルス(サーコウイルス)
- 鳥以外への感染はありません。
- 環境生存性が高いです。
- 羽嚢、嘴、爪の増殖細胞や免疫細胞などに感染します。
- 変異株も多数存在します。
発生鳥種
- インコ・オウム類
- フィンチ類ではコキンチョウでの報告があります。
- 国内ではセキセイインコで多いです。(飼育羽数が多いため?)
- 高感受性:主にオーストラリア・アフリカ原産種(セキセイインコ、ラブバード、ヨウム、白色オウムなど)
感染経路
- 水平感染:主に空気感染・経口感染が
- 垂直感染:親からの吐き戻し、卵を介して感染もあります。
- 主な感染源:羽毛塵(他に糞便、脂粉も)
症状
- 鳥種による感受性、感染経路、ウイルスへの暴露量、本人の状態にもよります。
- 多くは幼鳥期に発症します。
- 甚急性:肺炎、腸炎、体重減少、敗血症、急死など
- 急性:沈鬱、部分的な羽の壊死・破損・ねじれ・出血・脱落、再生不良性貧血など
- 慢性:全身羽毛の形成異常(羽軸壊死、羽鞘の残存した未成長羽、羽毛のねじれ、脱落、羽軸出血、ストレスライン)、免疫不全、ヨウムのレッドフェザー、嘴のツヤの減少(脂粉の減少による)など
診断
- 症状
- 遺伝子検査(PCR):血液で見ることが重要
治療
- 免疫賦活:インターフェロンの注射、免疫賦活剤の内服(アガリスクなど)
- 対症療法(免疫低下による二次感染予防)
予後
- 無症状 → 陰性になる可能性あり or 無症状キャリア(感染しているが症状がない、他の子に移す可能性)
- 症状あり→ 重度に発症している場合陰性にならない可能性高い
- 発症した大型個体では予後は悪いです。
予防
- ワクチンはありません。
- 接触防止
- 消毒:塩素系消毒薬(中性電解水がおすすめ)
セキセイインコ雛病(Budgerigar Fledglimg Disease:BFD)
原因
- APV(鳥ポリオーマウイルス)※現在γポリオーマウイルスアビス
- 不顕性感染(感染はしているが症状がない)がほとんどです。
- セキセイインコで始めに発見されたためこの病名がついてますが他の鳥種でも感染します。
発生鳥種
- ラブバードでの発生が多いです。
- 他のインコ・オウム類、フィンチ類にも感染します。
感染経路
- 水平感染:主に空気感染・経口感染
- 垂直感染の可能性もあり
- 感染源は糞便、羽毛、皮膚のふけ、唾液など
- あらゆる年齢で感染はしますが、幼鳥期が発症しやすいです。
症状
- 症状はPBFDに類似
- 甚急性〜急性:突然死と出血傾向(皮下出血、下血など)
- 慢性:羽毛症状
- 食欲不振、腹部膨大、腹水貯留、頭振(小脳感染)、肝臓腫大、腎臓腫大など
診断
- 症状
- 遺伝子検査(PCR):血液で見ることが重要
他に口腔・クロアカスワブ、便も検体となることがあります。
治療
- 免疫賦活:インターフェロンの注射、免疫賦活剤の内服(アガリスクなど)
- 対症療法
予後
- 幼鳥の発症個体では予後不良です。
- 無症状陽性では一過性のウイルス血症であることが多く陰転の可能性高いです。
予防
- 国内ではワクチンはありません。(海外ではワクチンがあります)
- 接触防止
- 消毒:塩素系消毒薬(中先電解水がおすすめ)
鳥クラミジア症(CHL)
原因
- Chlamydophila psittaci(現在は再びChlamydia属に統合)
- 偏性細胞内寄生性で細胞の中に感染します。
- 人獣共通感染症であり鳥さんから人に感染する可能性があります(人では「オウム病」と言われます)。
発生鳥種
- 全ての鳥種
- 100種類以上の鳥種で報告があります。
- 発生率は不明ですが、近年は減少傾向にあると思われます。
感染経路
- 水平感染:糞便が乾燥し飛沫した物や呼吸器系・眼からの分泌物の吸入・摂取
- 垂直感染:親からの吐き戻し、卵を介して感染も報告されてます。
症状
- 無症状が多いです。
- 呼吸器症状(くしゃみ、鼻水、咳、呼吸音、呼吸困難)、眼の症状(流涙、結膜炎)
- 肝疾患症状(尿酸の黄〜緑色化)
- 消化器症状(下痢、未消化便)
- 神経症状(脳炎)
- 貧血など
- 特徴的な症状が少ないです。
診断
- 遺伝子検査(PCR検査):糞便や他に咽頭・排泄腔スワブ、血液
- レントゲン検査:脾臓の腫大、肝臓の肥大、気嚢壁の肥厚など
- 血液検査:肝臓数値の上昇、単球数の増加、白血球数の増加
治療
- 抗生物質の投与:ドキシサイクリンなど
- 症状が消えても骨髄、肝臓、脾臓に潜伏することがある=完全に菌を除去することは困難です。
予後・予防
- ストレスなどで再発しないか注意が必要です。
- 消毒:中性電解水オススメ
鳥ボルナウイルス病(ABV)
原因
- 鳥ボルナウイルス(Avian Bornavirus )
- 複数の遺伝子型の報告があります。
オウムボルナウイルス(PaBV-1〜8)、カナリアボルナウイルス(CnBV-1〜3)、キンパラボルナウイルス(MuBV-1)、カエデチョウボルナウイルス(EsBV-1)、水鳥ボルナウイルス(ABBV-1, 2) - 潜伏期間が数年になることもあります。
- 神経組織に親和性が高いウイルスです。
発生鳥種
- インコ・オウム類(ヨウム、コンゴウインコ類、バタン類、メキシコインコ類など70種類以上で報告)
- カナリア、オオハシでの報告もあります。
感染経路
- 水平感染:経口感染?尿路感染?空気感染?経皮感染?はっきりとはわかっていないです。
- 糞便、そのう液、卵からも検出
症状
- 腺胃拡張症:慢性的な嘔吐、食欲不振、進行性の体重減少、そのう停滞、下痢、未消化便など
- 神経症状:運動失調、麻痺、振戦、けいれん発作、盲目 など
- 羽毛損傷行動(FDB)毛引き、自傷行動(SMB) 自咬など
診断
- レントゲン検査:重度の腺胃拡張
- 血液検査:CPKの著しい上昇
- 遺伝子検査(PCR検査):糞便
治療
- 対症療法:胃腸薬、消炎剤、抗痙攣薬
- 二次感染予防:抗生物質、抗真菌剤
- 食事療法:療法食の使用 *フォーミュラAPD(ラウディブッシュ社)
- 抗ウイルス療法:インターフェロンの投与
- 免疫抑制療法
感染した神経に対して免疫が過剰に働くことで症状が出るため、シクロスポリンなどを投与して過剰に免疫が働くことを防止します。
予後・予防
- 強く発症すると予後不良なことが多いです。
- 完治は難しいです。
- 消毒:中性電解水オススメ
鳥結核症(ATB)、鳥の抗酸菌症
原因
- マイコバクテリウム(Mycobacterium genavence、M.avium complexなど )
- 人に移る可能性もあります。
発生鳥種
- インコ・オウム類、フィンチ類など全て
- 高感受性:ボウシインコ、セキセイインコ、ピオナス、ホンセイインコ属、カナリア、オオハシ科など
感染経路
- 水平感染:経口感染が主、他に経皮、空気感染も事例があります。
- 自然界にも存在し、環境生存性が高いです。
- 感染が成立してから徐々に増殖、発症までに数年かかることもあります。
症状
- 消化器型:こちらが多いです。腸炎、慢性的な元気・元気食欲低下、肝臓肥大、腹水など
- 皮膚型:皮膚に肉芽腫性の結節など形成
- 他に呼吸器型、骨関節型(跛行、脚挙上など)もあります。
診断
- 症状
- レントゲン検査:肝臓、脾臓、腸管の肥大、骨病変
- 血液検査:肝臓数値の上昇(変化がないことも多いです)、白血球数増加(単球の増加)
- 遺伝子検査(PCR検査):糞便、他に血液、後鼻腔・クロアカスワブ
- 生検:腫瘤の検査
治療
- 抗生物質:クラリスロマイシン、レボフロキサシンなど
- 抗結核薬:エタンブトール、リファンピシンなど
- 対症療法:胃腸薬、消炎剤、肝臓薬など
予後・予防
- 完治は困難
- 消毒:アルコールが有効
上記以外にもMYC(マイコプラズマ症), MB(メガバクテリア症), CRY(クリプトコッカス症)の検査をすることもできます。病気に関する詳しいお話は来院時にご遠慮なくお聞きください。